現実以上

今更ですが、近年のCGの進化は物凄いものがあります。CGを描画するためにコンピュータ内で行われていることは現実世界の近似的なシミュレーションです。
先日とある仕事で光沢のある名刺大のカードをCGで作ったのですが、そのカードが照明を反射してカードの絵柄が見えにくくなるという問題が起きました。反射しない位置にまで照明をずらすと今度は光の当たり方が不充分で暗くなってしまうのです。

このような現実世界と同じ問題がコンピュータ内で起こることが素晴らしい訳ですが、ただあくまでCGなので必要なら照明を反射させないこともできます。それどころか照明という概念をなくすこともできるのですが、そのように世界を簡略化すると映像はマンガ的な絵に近づいていきます。それよりも折角シミュレートしている現実世界の不自由さを大切にして、現実世界と同じように照明やカメラの位置を工夫することでリアリティのある映像が得られます。

リアリティと書きましたが、我々が日頃見ているCGは実は現実の再現以上のものです。上に書いた名刺大のカードは現実に存在します。しかしそれを実写するよりも全てをCGで再現したほうが完成度が高くなるのです。この理由を一般的に説明するのは完成度を定義することと同じで難しいのですが、今非常に多くのCMに於いて商品はCGで描かれています。CMほど視聴者の反応次第なジャンルもないので、つまりそのほうが良いと多くの人々が(理由はともかく)判定していると考えて良いでしょう。

最後に少し飛躍しますが、Siriが充分賢くなった場合現実の人間以上の話し相手になるでしょうか?少なくとも僕は良くできたアンドロイドで特に差し支えないです笑。

unIQueness

僕は殆ど請負でしか映像作品をつくってきていないのですが、この度珍しく自分発信の作品をつくりました。

「人の知能とは何か」を対談と映像で紐解く短編動画シリーズで「unIQueness」といいます。主役というかゲストは世界で56番目にIQが高いという僕の友人で、メンサ(という高IQ団体)つながりです。彼の色々な話をひらさわが聞くという形式で進行します。随所に入るCGや映像処理はマニアックなのですが何も制約がない場合の自分の作風はこんな感じです。そのようなちょっと珍しい方向性の映像作品ですが、友人の作曲家若狭さんがこれしかないというような曲を付けてくれています。

上の動画は予告篇です。本編は追ってリリースの予定でなるべく月1くらいを目指します。作品についてもっと知りたい方の受け皿としてサイトもつくりました。ちなみに本シリーズはクラウドファンディング全盛の時代に逆行し、僕のポケットマネーだけで作って全編完全無料公開する方式となっております。ぜひお楽しみください。シェア歓迎です。

medicine

線維筋痛症と戦うシンガーソングライター如月まぁやさんの新曲「medicine」。そのMVとCMを作らせて頂いています。(この動画はCMでMV本編はショートバージョンを追って公開予定。フルバージョンはDVDとして発売予定!)同病のレディ・ガガもそうですが本番時にスイッチが入る人だからこそこれができる模様。

TIME MACHINE

前回に続き小室哲哉氏のことを。彼は元々TM Networkという3人組ユニットのリーダーでした。TMはタイムマシンの略です。自分達はタイムマシンでやって来た未来人だから先進的な音を作れるんだ、という訳です。

未来人というのは才能や知性が周囲から乖離した人間のメタファーに他なりません。小室氏がプロデュースする幾つかのユニットの、そのユニット自体のアイデンティティを歌うような曲には大抵天才が感じるもどかしさが見え隠れしています。しかもそれは、とても素敵な感情表現のレベルにまで昇華されたもどかしさです。

だからこそ曲として成立しヒットもする訳ですが、大抵の意識高い系の議論はその手前の段階にあります。それを超えられる知性に僕は驚いたし、それが結局今でも自分の価値観の土台になっています。

小室哲哉方式

突然ですが、PVでもCMでも、ちゃんと考えて作ろうとすれば結局作品単体ではなくブランディングの問題になってしまいます。なので、映像職人としてミニマムな部分だけを頼まれるよりも全体を見て考えろと言われる方が自分としては自然です。最近ではそういった全体の相談をして頂けることも多く楽しいです。

ただ、ブランディングを専門的に考えている人たちは主に会議室にいる印象なのですよね。自分の場合、常に会議室にいたい訳ではなく最終的には自分で撮ったりCGを作ったりもしたいタイプです。全体を見たいと上に書きましたが、職人が嫌なわけではなく全体を見た上で職人もしたいのです。

なんて我儘なんだと思いますが、これを自分では勝手に「90年代の小室哲哉方式」と呼んでいます。つまりプロデューサーでありながらも演奏するしコーラスも歌うという…。僕が学生の頃がまさに小室氏全盛期だったのですが、その頃からそういう形で仕事をしたいと思っていました。

そのやり方を通す為にはマニアックな部分と分かりやすく説明する部分の両方が必要ですが、それをまさに実践していたのも小室哲哉です。勿論小室氏と僕では仕事のスケールもクオリティも全然違うのですが、だからこそいまだにインスパイアされるのです。