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優れた作品の定義・その2

これはK-POPアーティストのTWICEが最近発表したMVですが僕はかなり衝撃を受けました。自分には及びもつかない程良くできているからですが、それはつまり前回からの流れで言えば「より難しい問を解いた結果生まれた作品」ということになります。具体的にどのような問が解かれているか説明します。

まず前提としてTWICEは躍進著しいK-POPアーティストの中でも大御所なので、絶対失敗できないし滅多なことはできないというプレッシャーのかかる立場にいます。ある意味ディズニーみたいなもので、例えば反社会的なやさぐれたような演出はできないし、実験的な映像表現もあまり試せないと思います。

とはいえトップアーティストなので手堅く作るだけでなく何かしら新しさを提示しなければなりません。言ってみれば保守的であると同時に革新的であることを求められているわけで、これがTWICEに課せられている難しすぎる問です。

この「I GOT YOU」が凄いのは冒頭でその問を解いてしまっている点です。嵐の海を見つめる女性は不安にかられていると視聴者は予測するのですが、それを裏切って微笑むという演出は絵的には全然尖っていないのにも関わらず、鳥肌が立つくらいシャープです。

その後はまるでディズニー映画のような安心感に満ちた船内のシーンになるのですが、外は嵐だという前提があるので一捻りした意味合いになります。保守的であると同時に革新的であれ、という無茶な課題がクリアされているのです。(勿論この作品には、これ以外にもいろいろな問と解が存在しています。)

ちなみにこれらについても、僕は上に書いた順番で考えたわけではありません。MVの中にまず解を見て、解から問が分かる、というような過程を経て理解した内容を逆から書いています。解かれた問の難しさからプレッシャーの大きさが推測できるし、だからこそTWICEが嵐の中にいて恐らく一度死んでいるというストーリーが誇張でないことも分かるのです。

そのプレッシャーは表面的には外部からかかっているのでしょうが、より本質的には彼らが自分で自分にかけているように思えます。ちょっと、命がかかっているようにすら見えます。

どうしてそこまで、と思うのですが、困ったことに自分も同業者なのでこの感動を糧に努力したいと思います。


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